一時預かり保育のルール
2020/06/03
「GW10連休中の保育園」と「保育補助加算」の記事から子どもを保育園に預ける保護者の方々もこの”教えて保育の参考書”にアクセスされるようになりました。
そこで今回は、保護者の方々から問い合わせがありました「一時預かり保育」について解説いたします。
質問が多かった”一時保育をなかなか利用できない現状”についても掲載します。
※今回は認可保育園の一時保育についての記述となります。
◆そもそも一時保育とはどういうもの
・一時保育とは、おもに認可保育園や認定こども園で行われている特別保育事業のことです。予め定められた保育園の定員ならびに通常の保育とは別枠で子どもを1日単位で受け入れるシステムです。認可保育園や認定保育園、保育ママなどに預けられていない子どもが対象になります。
一時保育を利用する為の理由には、大きく3つの理由を掲げている自治体が多いです。
1、緊急保育
→保護者が病気や出産、冠婚葬祭など、急に保育が必要になった場合。
2、非定期型保育
→保護者の不定期の就労や通学、介護などで保育が必要になった場合。
3、リフレッシュ保育
→保護者の育児疲れ解消を目的としたリフレッシュなどのために保育が必要な場合。
ですが、基本的には認可保育園や認定保育園、保育ママなどに預けられていない子どもで、一時保育の利用を希望する必要があれば申し込むをすることは可能です。
「3」に書かれているリフレッシュ休暇については細かい規定がありませんので、夫婦の結婚記念日のお祝いで出かけたいという理由でも問題はありません。
また基本的には、自分が住民票を置いている自治体の保育園が原則ですが、中には就業先の自治体でも受け入れが可能なこともあります。託児所との違いは、厚労省が認可されている保育園で保育士資格を所有している所であり、保護者からすると安心して預けられる施設とも言えます。
◆保育利用料と預かり時間と日数
・これも各自治体によって定められているので、様々ですが・・・一般的には以下の条件が標準と言われています。
1、預かり時間 | 9:00 ~ 17:00の間で4時間以上8時間未満 | 送迎のピーク時や延長の時間は利用不可が多い。 |
2、保育利用料 | 1時間500円+昼食代+おやつ代 | 乳児、幼児で違うことも。アレルギーは弁当持参も。 |
3、預かり日数制限 | 週4日以内。月10日以内など |
自治体によっては多くの方に利用してもらいたいという目的で利用制限を設けている。 |
4、土日の預かり | 原則平日のみ。施設によって応相談 | 規則上は土曜OKも判断は保育園の状況による |
※東京都の公立保育園を参考にしたデータです。
民間の私立保育園や認証保育園等の地域認定保育園などであれば、もっと柔軟に預かってもらえる環境が整っていたりしますが、金額は上記金額より割高になる傾向があります。
また、自治体によってはあくまでも”一時保育”ですので、同じ人が利用するのではなく、多くの方が利用できるようにという目的で利用日数制限を設けている自治体もあります。
ここでポイントになるのが「預かり時間」と「土日の預かり」です。
一時保育の中でも緊急保育と非定期型の希望者が割合的には最も多く、これらを目的とする保護者の多くが、出勤にあわせた早朝の時間や土曜日を希望しているのが現状です。
しかし、多くの施設が早朝や夕方は受け入れておらず、土曜日はほとんどが不可となってしまいます。なぜ需要が多いこの時間帯はNGなのでしょうか。
◆一時保育の受け入れは保育園側が判断して決めてよい
・一時保育の受け入れ基準は自治体が定めておりますが、受け入れ方法は自治体ではなく保育園側との直接契約になります。その為、多くの保育園が自分たちの保育園運営に支障がないことを基準に一時保育の受け入れを決定します。
一時保育は何度か利用して慣れている子どもや4、5歳児であれば在園児と一緒に保育を行うこともありますが、原則として一時保育専任の保育士が対応することがほとんどです。しかし東京を中心とした一時保育の需要が高い地域はどこも保育士不足。わざわざ一時保育の為だけに職員配置をすることは難しいというのが東京を中心とした保育園の現状です。その為、早朝の人手が少ない時間や少人数で運営する土曜日保育は受け入れに積極的ではないのです。
また一時保育を担当する職員は新人ではなく子育て経験や保育士経験豊富な職員が担当することが多く、経験豊富な職員確保も各保育園は難しくなっているのも一時保育利用の壁になっています。
その為、自治体のHPなどでは一時保育の受け入れ可能な保育園が多く掲載されていても、実際に一時保育を受け入れているのは、月に3~4名程度しか預からないという保育園もあるので、実際には皆さんが予想しているよりも受け入れはとても狭き門になっていることが多いです。
※保育士不足が解消されれば、もっと柔軟に各保育園も対応することが可能になります。
◆一時保育よりも通常の保育を優先(こんな時期は利用不可)
・一時保育はあくまでも、”通常の保育に余裕がある際に地域の子育て支援の一環として行うもの”である為、いつでも預かってもらえるわけではありません。東京を中心とした都市部の保育園では常に定員が埋まっているため「職員体制に余裕がある時」と「行事等で保育園が特別な事情がない時」と限られてしまいます。また認可保育園では原則として通常の預かり保育においては子どもを選ぶことは出来ません。その為、その年に障がいなどを抱えた支援児が多く入園していたりすると、その年は一時保育の預かりを停止することもあります。
★以下の時期は一時保育の利用が難しくなります。
1、入園児が多くクラスが落ち着いていない4月。
2、長期休暇あけで子どもが不安定なGW明けの5月上旬~中旬。
3、職員が順番で休暇を取得する8月の中旬。
4、運動会や発表会、卒園式などの開催日~10日前の期間。
5、年度替わりの3月中旬~下旬。
6、インフルエンザなどの感染症流行時
◆一時保育は一度でも利用すると受け入れてもらいやすい?
・答えは『YES』であり『NO』です。
一時保育の利用決定は上述の通り保育園です。その為、保育園側は初めて利用する子どもよりも、ある程度特徴を理解している子どもの方が保育の計画が立てやすいです。保育園側の体制を踏まえて一時保育を受けるかどうか、判断に迷う場合は大抵、通常保育を優先して断ります。しかし利用歴があり保育の計画が立てられる子であれば『あの子であれば受け入れても大丈夫』という回答に繋がることは実際にあります。
また『一時保育は出来るだけ多くの方に利用してもらいたい』というのが自治体の想いではありますが、非定期型保育を希望する特定の子どもを週4日などで定期的に受け入れて一時保育枠を埋めてしまっている保育園も実際にあります。
しかし、逆のパターンもあります。あまりに子どもが元気すぎて保育士の負担が大きすぎてしまったり、通常の保育園運営に影響が大きいと判断されてしまうと、残念ながら他児を優先して断られてしまうこともあります。子どもだけではなく保護者の態度も重要で、予定していた時間に迎えに来なかったり、緊急時に連絡がつかなかったりすると同様に他児を優先して断られてしまうこともありますので、特に後者の保護者の対応には注意してください。
◆保育園の職員がいつも一時保育を使っているのは違反じゃないのか
・結論から言うと問題ありません。繰り返しになりますが一時保育の決定権は保育園側です。その為、保育園の職員の子どもを優先的に一時保育を使っていても問題ありません。しかしルールを変えることは出来ませんので、預かれる時間も料金も一般の皆さんと同じように徴収されます。その為、給料の半分近くを一時保育料として持っていかれてしまいます。この場合は保育園側が『福利厚生』として法人負担をしている場合があります。一見ずるいように感じるかもしれませんが、優先制度がある保育士の子どもであっても入園できないというのが東京を中心とした都市部の現状なのです。
しかしこの一時保育の特別ルールを適用すると、一時保育枠は1つ埋まってしまいますが、代わりに通常保育の充足を図ることに繋がります。このような保育士を確保するための努力も運営側はしています。
◆一時保育の利用する確率をあげる為に出来ること
・ここまでの内容から都市部の待機児童が多い地域では、一時保育の利用が大変難しいというのがご理解できたかもしれません。ではどうすれば一時保育の利用する確率をあげることが出来るでしょうか。
1、一時保育を利用する際には面接や迎えの時間をきっちり守り、必ず連絡がすぐに取れる環境を心掛けてください。
2、事前面談の時に、自身の子どもの気になることや家庭での保育の様子をしっかり伝えておく。(睡眠の入り方、泣いたときの対応。好きなものなど)
3、一つの施設にこだわらず、まずは多くの保育園に1件1件電話をしていくこと。
特に『3』は重要です。意外と3つ4つ電話をして断られるとあきらめてしまう保護者が多いです。
また保育園側としておススメは出来ませんが、本当に必要な時期以外で保育園の余裕がある時期に『リフレッシュ休暇』として一度預けてみることで保育園との関係を築いてみてもよいかもしれません。
それとこれも全ての保育園がそうというわけではありませんが・・・リフレッシュ休暇よりも就業等で預けたい保護者を優先する保育園も中にはあります。その為、リフレッシュ休暇で何回も利用しようとすると断られてしまう可能性もあります。
(保育所保育指針の改定で本来はリフレッシュ休暇での利用も保育園の役割のはずなんですけどね★)
◆この記事のまとめ
・一時保育について、意外と保護者の方は利用に関して不透明であると感じている方が多いようで、単純に『必要としているのにどうして利用できないの!?』という想いがとても強いようです。保育園で働く立場としては一時保育も積極的に預かりたいところではありますが、やはり通常保育を優先にしていかなければいけないというのと、保育士不足という現実に私たちも悩んでいるというのが現状です。今回は10連休中の保育園と保育補助加算から一時保育の話題もあがりましたが、引き続き何か保育士、保育園、保育業界に関することで気になることがありましたら”教えて保育の参考書”までお気軽にお問合せください。
みなさまからのご連絡、心よりお待ちしております。
(保育士Yu-ki ツイッターアカウント)