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10連休で話題・保育補助加算

2019/03/02


平成31年5月1日(水)に天皇陛下の皇位継承にあたり、4月末から5月にかけて10連休になることがほぼ確実に。

しかしこの10連休に接客業やサービス業、医療関係者や介護事業に携わる人など、仕事をする人たちは多いことから、子どもを抱える働き手には悩みの種になっているとの報道が過熱。

そこで政府が国民の生活に支障が出ないための対処方針を打ち出した方針の中には「保育補助加算」というものが含まれていました。

では具体的に”保育補助加算”とはどういうものなのか。「親がもらえるのか?保育士がもらえるのか?」「GWの10連休の保育園は開園するのか」と話題になっている。

今回はこの”保育補助加算”についての解説です。もちろん”教えて保育の参考書独自の切り口”もあわせて掲載します!

◆今回は情報と地域情勢が大きく異なるので”東京23区”をもとにした解説になります。

 

◆発端は北国新聞のこども園に関する記事から

・保育補助加算についての報道が過熱したのが2月26日(火)しかし、このニュースの発端は2月14日の北国新聞の記事。

 

【北国新聞の記事より一部抜粋】

122の保育所・認定こども園のある金沢市の場合、通常、多くの園は土曜は開園し、日祝日は休園している。日祝日も開園しているのは7園のみだ。7園以外も日祝日に特別に開園することは可能だが、その場合は人件費などに対する市の予算措置がないと難しいという。

第一善隣館保育所は、休日保育を行う7園の一つだ。ただ、前例のない今回の10連休への不安は大きく、園長は「保育士、職員のスケジュール調整が大変だ。休園日を設けないと、スタッフが回らないかもしれない」と表情を曇らせる。同じく休日保育を行う、認定こども園の担当者も「連休中に最低3日は休園が必要だ」と指摘。

「保育士にとって大型連休の機会はそうない。ライフワークバランスを保つためにも、今回くらいは休ませたいというのが本音だ」と別の園長はこう語り、今のところ暦どおりに休園する考え。市から求めがあれば休日の開園を検討する準備はあるものの、「早く方針を決めてほしい」と話す。

連休中の保育所の対応について、金沢市の担当者は「問題意識はある。ただ、過去に例のない大型連休で慎重に検討を進めている」と語る。連休を決めた国が対策を打ち出していないこともあり、他の市町も「現状は方針が決まらず未定だ」「休日保育を求める保護者数の予測が難しい」などと対応を決めかねている。

10連休に関する特別法を審議した衆参両院の内閣委員会は「国民生活に支障がないよう万全を期すべきだ」とする付帯決議を採択し、保育についても政府に適切な対応を求めている。

一方で、内閣府の担当者は「国として一律対応は難しい。自治体の工夫次第になりそう」と漏らす。認可保育所を所管するのは市区町村で、それぞれの判断になるという考えで、休日保育の態勢拡充を検討する自治体も出てきた。

この報道が、今回の保育補助加算の大々的な報道に繋がったのではないだろうか。

 

 

 

◆保育補助加算は保護者ではなく保育園に入る補助金

・保育補助加算については、一部で保護者に入るものではという憶測がありましたが、これは間違いです。

今回の保育補助加算は、GWの10連休中に開園をする保育園や認定こども園を対象に、特別予算を分配し一時保育をベースに子どもの受け入れを促すことを目的とした補助金扱いになりますので、支給対象は保育園・認定こども園となります。

 

◆保育補助加算は既に保育園では支給済み

・自治体によって差はありますが、実は保育補助加算については、既に保育園の運営管理費の中で支給されている制度です。この制度についてYAHOOニュースで分かりやすい表がありましたので、こちらをご参考ください。

◆上記の表はYAHOOニュースより抜粋。

 

保育補助は通年で一時預かり保育を使った子どもの延べ人数によって、補助金が決定します。

しかし、現行の制度ではGWの10連休中に一時保育を積極的に受け入れたとしても延べ人数の記入が変わるほどの受け入れは出来ない為、現実的に補助金の金額は変わりません。

そこで、10連休に限っては一時預かり保育を利用する子ども1人当たりで補助金を加算することでGW中の人件費を対応しようという考えです。

※加算される子ども1人当たりの補助金額はまだ調整中。

 

 

◆そもそもどうして10連休?

・新天皇の即位を祝う日が5月1日(水)に決まった為、5月1日(水)は国民の祝日になります。

そこに日本独自の”祝日法”が加わります。祝日法では「その前日及び翌日が国民の祝日である日は休日とする」と規定しています。

その為、前後を祝日にはさまれた日は、その日も祝日になります。

つまり5月1日(水)が新天皇の即位の祝日となった為・・・

 

4月29日(月)→昭和の日

4月30日(火)→祝日に挟まれたので祝日

5月  1日(水)→天皇即位日

5月  2日(木)→祝日に挟まれたので祝日

5月  3日(金)→憲法記念日

 

ということで以下のカレンダーになります。

 

 

もちろん新天皇の即位の祝日は今年に限ったことの為、来年以降は5月1日は祝日ではなく、間に挟まれた祝日もなくなります。

 

 

◆鍵はカレンダーの赤字。そもそも保育園は休園日

・保育園は原則カレンダー通りの開園日と定めているところがほとんどです。その為、この10連休中は保育園を開園する義務はありません。現実として開園するのは予め自治体との間で休日保育を約束している保育園のみとなります。また緊急措置として公立保育園が自治体の要望を受けて開園することがあるかもしれませんが、前述で述べたもともと休日保育を実施していない私立保育園では、わざわざGWに保育園を開園して一時保育で積極的に子どもを預かる保育園は現実的に少ないでしょう。

また一時保育での預かりであるため、一時保育を実施していない保育園でもこの連休中は自分の保育園以外の園児を預かることは原則できません。

 

 

◆各保育園が開園を見送りたい理由

・まず今回の発端となった石川県では”予算”の都合をあげています。地方の保育園では各自治体の緊縮財政や定員割の影響を受けて、厳しい経営を展開している保育園も少なくありません。実際に東京では、社員のほぼ100%が正職員でありながら、まだまだ地方では、社員であっても半数近くが契約社員である保育園も少なくありません。その為、社会貢献をしたいという想いはあっても、わざわざ経営を圧迫する”損して損をする選択”は現実的はないのです。そして更に現実的な話をすると、既に運営費の中で”休日加算”と”一時保育加算”をもらっている保育園では、利用者から保育料を徴収したとしても人件費&運営費を考えると赤字になることがほぼ確実です。

また通常の休日保育とは異なり、一時保育は預かっても1日に2~3人が限界。今回に限って言えばそれ以上を預かると考えると、当然保育士は通常の配置人数より多めに配置しなければいくらプロの保育士集団といえど、対応することは難しいでしょう。

 

・次に東京の見解では・・・”人手不足”であるということ。北陸新聞の記事にも掲載していましたが、このGWに保育園を開園することは人員の大きなリスクを背負うことになります。

 

1、保育士宿舎借り上げ社宅制度の積極的活用により、地方から上京している保育士の割合が増えたことでGW中には帰省希望の保育士が多い。

 (保育士借り上げ社宅利用者はこういう場合、優先的に勤務をする規定を定めている保育園もあります。)

 

2、保育士にも当然予定があり、子どもがいる保育士からしたらGWは出来るだけ休みたいという希望が多い。 

 (カレンダー通り休めるのが保育士のメリットなのに・・・というのが保育士の本音でもあります。)

 

3、休日割増手当での支給になると思いますが、就業規則で年間休日や休日規定が定められていた場合は”振休”にしなければいけないので休みをどこかで与える必要がある。

 

4、保育園の運営において多くのパート職員に助けられているが、多くが家庭持ちの為、このGWはパートの出勤は見込めない。

 

これらの結果、保育士不足が過熱している東京の保育園では職員マネジメントにおいて大きなリスクばかりとなります。経営者たちの見解としては”保育補助加算”ではなく”自治体側が保育士の手配をしてください”というのが本音です。つまり保育補助加算なんてものは求めていないのです。

 

 

◆”保育補助”という職員すら集まらない東京の現実

-ここからは”教えて保育の参考書”独自の切り口です。

今回の保育補助加算については、一時保育における追加予算という見解になっていますが・・・実は都内では実際に保育士資格を持たない無資格の保育補助として働く職員に対しても運営費の補助金が出ています。

そしてこれは意外と言われるのですが、、、都内で私立保育園における発達支援児(障がい児)の加配については保育士ではなく、この無資格の保育補助がついている保育園は少なくありません。実際に上述の保育補助加算の表にも記載されているように”保育補助”でも保育士を配置した時よりも金額は落ちますが、、、ちゃんと予算は出来ていますよね??同様に発達支援児における加配職員については保育士でなければいけないという規則はなく、無資格の保育補助であっても自治体からの予算が出ているのです。

(東京23区の某自治体では発達支援児における職員配置加算は各クラス最大1名分と定め、その費用は月額80,000円~100,000円程度の支給。)

 

しかし、それでもこの発達支援児の加配を担当する保育補助の確保すら大変難しいという保育園も多く、東京23区内の保育士不足の深刻な地域では、時給1,100円でも無資格の保育補助を確保することが出来ず、職員の負担増となっていることから、運営側が発達支援加算については、お金ではなく実際に働いてもらえる保育補助者を自治体から提供して欲しいと強く希望している保育園も少なくないというのが、東京23区内の保育園の現状です。

(そんな状況であればわざわざGWの休園日に保育園をあけて一時保育で積極的に子どもを預かるというのは大変大きな問題となってしまうのです。)

 

◆この記事のまとめ

・私たち保育士は基本的にカレンダー通りの休みであり、そんな休みの日にデパートやレジャー施設で働いてくれている方がいるからこそ、充実した休日を送ることが出来ていますので、このような方々には心から感謝しています。しかし、今回は保育現場目線からの現状として解説しているため『予算を出せばそれで解決』と考えている保育園は意外と少ないのです。

今回の保育補助加算については否定的な意見が大変多くみられますが、政府はあくまでも一つの案として提案をしただけです。10連休を導入するからにはそれなりの対策をしなければと早急に動いたことは、好意的に捉えてもよいと思います。ただ、思った以上に世論はこの10連休に対して否定的な考えが多かったのでしょう。

よい機会でしたので、東京を含む待機児童問題&保育士不足地域における”保育補助”ですら職員が集まらないことも解説しましたが、今後も”教えて保育の参考書”ではこの保育補助加算とあわせて10連休の保育園問題について追って解説していきたいと思います。

 

 
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