保育士の子どもは優先して入園できる?
2020/06/03
「保育園落ちた日本死ね」
あの衝撃のNEWSから1年。今年もツイッターやブログには「#保育園落ちた」の記事や書き込みが。
ここで最近言われているのが、保育士の子どもは優先的に認可保育園に入園できるという情報。
しかし、保育園の子どもであっても認可保育園に入園出来ていないという現状も。
では、保育士の子どもの認可保育園への優先入園は本当にあるのか。今回はこの記事の解説です。
それとこの記事に対する保育士の保護者対応についても追記します。
◆認可保育園の基準となる点数制度とは
・全国共通のルールとして認可保育園では、各自治体を経由して保育園に入園するということ。簡単に言うと原則として保育園側は入園する子どもたちを選ぶことは出来ません。またその認可保育園に入る為には各自治体が独自に定めた点数制度により順位を決めていき、その点数が高い順に入園を決めていくのが一般的と言われています。
実際に子育て経験のある保育士は理解しているかと思いますが、まだ子育て経験のない若手や新人保育士は必ず勤務している保育園のある自治体の入園点数表ならびにその仕組みは憶えておきましょう!
◆点数の決め方は各自治体によって様々
・認可保育園における入園点数の決め方は、各自治体によって独自に定められています。この独自基準がとても重要です。気を付けなければいけないのが、日本全国一律ではないので今後自分の子どもを保育園に預けたいという保育士はこのあたりの各自治体の制度を見た上で、転居ならびに育休を選択するのか、退職して子育てを選択するのかを考えた方がよいでしょう。保育園入園点数表は各自治体のHPより確認が出来ます。
◆平成31年度さいたま市保育施設利用調整基準表
◆保育士の加点はあります!!
・では今回の主題となる保育士の加点はあるのかという回答ですが・・・あります!
まず以下の点数表をご覧ください。これは山梨県甲府市の保育園入園に関する点数表です。
甲府市独自の保育園調整点数表に、明確に「保育士の優遇」という項目があります。
この場合、基本点数に7点が加算されることになります。これは生活保護世帯よりも点数が高く、基本的に保育士はほぼ保育園に入園が出来るということになります。
フルタイムでなくてもこの7点加算により保育園に預けることも可能な為、正職員ではなくパートとして仕事を続けたいという保育士の希望も叶えることが出来ます。
実はこのパートとして仕事を続けたいというのも保育士不足解消に大きな役割を果たすことになります。
ちなみにこの甲府市の独自項目で保育士が入園に優遇されるきっかけとなったのは、甲府市内の保育園の経営者たちが甲府市と話し合いを重ねて、自分たちの保育園の保育士たちの為に、今勤務をしている保育園で育休等を取りながら長く働けるように、保育士が円滑に確保できるようにという想いから実現したそうです。
◆保育士不足解消に大きな効果が発揮!
・実は保育士の多くが、自分の子どもが生まれた場合は子育てに専念したいという希望が多く、この割合は一般企業と比べて大変高い数字になっています。また働きながら育てるという選択肢であっても負担が大きい正職員では難しいという判断から育休後はパートに切り替えたいという方もとても多いです。しかし、パート勤務の場合フルタイムよりも入園点数が低くなるため、復帰する際は正社員という選択になってしまいます。そうなると必然的に保育士は結婚を機に退職という選択が増え、保育士が現場から足りなくなってしまうのです。
しかし、東京都内や埼玉、神奈川、仙台市や福岡市などの都市部では正社員であっても仕事復帰出来ないという事例も多く発生。特に一度退職して、正社員で仕事復帰しようとすると「仕事復帰組」になる為、現在就業中の方より点数が下回るので、保育園に預けられず仕事復帰が出来ないということも少なくないのです。その為、保育士確保が課題となっている各自治体においては保育士の保育園入園優遇措置が取られるようになったのです。
◆点数表に明記されていなくても加点をされる保育士優遇
-ここからは好評??の”教えて保育の参考書”独自の切り口です。
・実は筆者は保育園の新規開園業務や事務的やり取りから、東京23区の保育課の職員とは色々情報を共有する機会が多いのですが・・・多くの自治体で「保育士の保育園入園優遇措置はあります」という回答をいただいています。最近は23区内でも「※」などでも文章表記されることが多くなりましたが、内容をより具体的に記載すると自治体の見解は以下の通りになります。
【入園に関する基準点数を基本に入園を決定。もしその基準点数が同率の場合、医師、看護師、保育士は優先的に保育園に入園に出来るよう配慮をしています】
つまり甲府市のように明確に表記していない自治体でも、他の保護者と条件が同じ場合に限って保育士は入園を優遇されているということです。
◆保育士が気を付けなければいけない保護者対応
-”教えて保育の参考書”独自の切り口その2です。
・このような保育士優遇は、待機児童問題の一つの要因にもなっている保育士不足の問題解消に繋がっており、預ける保護者も当然保育士が少なければ不安になりますので、冷静に考えれば必要な措置に思われます。しかしこの保育士優遇の結果、入園が出来なかった保護者も当然発生するわけです。そうなると保護者から『先生は入園しやすくていいですね』と言われることも当然あります。仮にその保護者は今、入園で出来ていても・・・自分が入園する際に大変だった。兄弟児が一緒に入園できなかった。友人は待機児になってしまったという様々な事情で不満を抱えているかもしれません。
率直に言うと、筆者は実際に保護者から複数回言われたことがあります。そして私もこの保育士優遇の恩恵を明らかに受けており、二人の娘は待機児加点も兄弟児加点もなしで激戦と言われる2歳児クラスから第一希望の認可園に入園が出来ました。
他の同期入園組の家庭環境と比較すると、他の家庭は皆さん『兄弟児』『認証園、認可外での待機児特典』『ひとり親世帯』のいずれかでした。
では私は保育園の保護者や自分の娘の同じクラスの保護者にどのように回答しているのか。私は以下のように答えています。
『保育士が明らかに足りないという状況であれば必要な措置だとは思いますが、率直にありがたいという気持ちと申し訳ないという気持ちの半々です。だからこそ入園できたことに感謝をすると共に、保育士としてしっかり仕事をしていかなければいけないと思っています。』
前半は申し訳なさそうに・・・そして最後の一文は自信をもって答えています。
実際の本音まではわかりませんが、今のところ直接の反応は、好意的に受け止めてもらっているようです。
私は保育士として働くにあたりこのような機会も保護者対応において関係を深める一つのチャンスだと捉えています。
◆この記事のまとめ
・今回の保育士入園優遇については、世間的に賛否が分かれる問題かもしれませんが、保育士にとっては必ず把握しておく内容の一つだと思います。そして実際に働く保育士にはこの優遇制度の存在を知った上で自分が保育園に預けようと考える際には役立てて欲しいと思います。保育士は当然のこと、保護者の方にもご理解いただきたいのが、実際に保育士が仕事復帰できずに予定されていた保育園の新規開園が出来なくなった。予定していた保育士が仕事復帰できなかったことから、姉妹園から急遽異動になった。保育士が少ないのではという不満が寄せられるといった保育業界の現実問題も発生しているということです。
個人的には保育士が自分の子どもの子育てに専念したいという気持ちの強さをわかっているので、退職ではなく育休の選択や正職員ではなくパートでの復帰という気持ちを応援してあげたいのですが、、、やはり今のご時世、色々都合があると思いますので、正しい知識とその影響については把握しておくと今後に役立つのではないかと思います。
みなさまからのご連絡、心よりお待ちしております。
(保育士Yu-ki ツイッターアカウント)