保育士のキャリアパスとは
2020/06/03
先日、掲載をしました保育士等キャリアアップ研修に関する記事に出てきました”キャリアパス”という言葉。
今回は保育所におけるキャリアパスについて解説いたします。
ここではまた改めて記載しますが、保育士処遇改善加算Ⅱについても関連性を記載いたします。
◆キャリアパス制度とはどういう意味
・”キャリアパス”とは”組織における出世の順序のことです。
一般的な企業では、社長を組織のTOPとして考えた場合、いきなり一般職が社長になることはありません。(小規模、一族経営者は除く)
社長になるためには取締役の経営責任者レベルの役職の中から選出←部長←課長←係長←主任といった段階を踏んでいかなければいけません。
この段階的な流れをキャリアパスと言います。その段階を踏むにあたり、どのような経験や知識を備えるとその階級への目安になるかを考えたものがキャリアパス表となります。
◆保育園におけるキャリアパス
・では保育園におけるキャリアパスはどうなっているのか。どのような役職を作るかはそれぞれの保育園が独自に決めることができます。キャリアパスを各保育園で制度化することは国により推奨されており、そのベースとなるのが、先日の記事に記載しました処遇改善費加算Ⅱと関連していきます。
上述の図表は内閣府・厚生労働省が公表しているものです。
以前の記事でも記載しましたが、保育園における給料は主に手当で上がっていくもの。
そして大きくわけると「園長」「主任」「その他保育士」という3つで給料と業務内容は区切られる傾向にあります。
そこで、国は目安として「一般保育士」→「職務分野別リーダー保育士」→「専門リーダー保育士」→「副主任保育士」→「主任保育士」→「園長」という具体的な階級とその目安を公表しました。
これは、図解の赤字で記載されている「5,000円」と「40,000円」の具体的な金額と大きくかかわっており、この金額が保育士処遇改善手当Ⅱの金額になります。
ここから先は保育士キャリアアップ研修と保育士処遇改善手当との関連性に沿って話をしていきますが、キャリアパスは各保育園独自に定めているものなので、上述以外には以下のようなものもあります。
◆経営層における保育園のキャリアパス
・基本的には上述のキャリアパスで十分ですが、保育園によっては経営層のキャリアパスというのもあります。
事務員→事務長or副園長→園長→理事長になるというキャリアパスモデルです。
これは主に社会福祉法人における一族経営の保育園が主に適用されています。別にそんな経営層なんて現場の保育士にはいらないと思うかもしれませんが、この保育士処遇改善費は国の補助金で成り立っているので、経営に関しては透明性と明確な基準を設けなければいけないというルールがあるので、保育園にはこのような経営層のキャリアパスも作られているのです。
まぁ・・・”教えて保育の参考書”の独自の切り口で言ってしまうと、副園長や事務長というのは、一般的に一族経営の関係者が高額の収入を得る為に作られている独自の役職であり本来は副園長も事務長も「次期園長」を見据えた順番待ちor育成ポジションとして置くのが本来のキャリアパスであり、このような意図で副園長や事務長を定めているような保育園は長いビジョンで経営を考えている保育園かもしれません。
◆保育士キャリアアップ研修の詳細
・先日の保育士キャリアアップ研修の記事において、もっと内容を詳しく教えて欲しいという声がありましたので、ここで詳細を記述します。
まず8分野に分かれている保育士キャリアアップ研修は『専門分野別研修』『マネジメント研修』『保育実践研修』の3つに大きく分けられます。
◆専門分野別研修
【乳児保育】
主に0~3歳未満の保育内容。
乳児に関しての理解を深め、個々の子どもの発達に応じて他の保育士に的確な指導ができることを目的。
具体的な研修内容として「乳児保育の役割と機能」「乳児保育における配慮事項」など。
【乳児教育】
主に3歳児以上の保育内容。
幼児に関しての理解を深め、個々の子どもの発達に応じて他の保育士に的確な指導ができることを目的。
具体的な研修内容として「幼児教育の現状と課題」「幼児期にふさわしい生活」など。
【障害児保育】
障害児に関しての理解を深め、個々の子どもの発達に応じて他の保育士に的確な指導ができることを目的としています。
障害のある子どもの理解だけでなく、該当児の支援はもちろんのこと、障害児と他の子どもとの関わりについても学ぶことが出来ます。
【食事・アレルギー対応】
食育に関しての理解を深め、適切に食事計画の作成、アレルギー対応、他の保育士へ的確な指導ができることを目的。
アレルギー対策は現在、保育所における最重要課題の一つとされており、保育所の監査等では具体的にチェックされている項目です。
【保健衛生・安全対策】
保健衛生、安全対策に関しての理解を深め、他の保育士に的確な指導ができることを目的。
保育園における看護師業務について保育士も同じように学ぶことが出来ます。主任、園長になるには身に着けておきたい専門知識です。
【保護者支援・子育て支援】
保護者や子育て支援に関しての理解を深め、他の保育士に的確な指導ができることを目的。
普段の保護者対応とは異なりますが、保育所保育指針の改定により保護者や地域支援の重要性が明示されていることから、主任、園長になるには身に着けておきたい専門知識です。
◆マネジメント研修
ミドルリーダーに求められる役割と知識を理解し、自園の円滑な運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント・リーダーシップの能力を身に付ける内容です。
◆保育実践研修
現在資格を持ちながら保育業務に従事されていない「潜在保育士」や国家試験で保育士資格を所有した「実習経験の浅い保育士」を主に対象。
◆保育士キャリアパスと処遇改善Ⅱとの関連性その②
・では、具体的に役職を定めた場合、いくらの給料加算が見込めるのか。それが以下のイメージ表となります。
保育園の規模(子どもの定員数&園児の年齢別人数)によって、国からの補助金が決定します。これは”人件費のみ”を対象としており、保育士の給料以外に使うことは禁止とされています。
また主任、園長、そして理事長といった経営層にも使うことは出来ません。使うことが出来るのは副主任以下の保育士となります。
100名規模の保育園であれば、40,000円が5人。5000円が3人に毎月補助金が支給されます。これが処遇改善費加算Ⅱというものです。
40,000円加算されれば40,000円×12で年間480,000円の保育士給料アップとなります。
しかし、これにはもらえる職員ともらえない職員で大きな差が生まれることで、トラブルが起きることが想定されます。
その為、保育士キャリアアップ研修を一つの支給条件に定めることと、処遇改善費加算の一部を分割して職員に分配することも可能な方法もあるのです。
◆ここでも見切り発車だった!?保育士処遇改善費加算Ⅱの穴!(独自の切り口)
では・・・”教えて保育の参考書”ならではの視点でバッサリ斬っていきます。全ては内閣府のFAQでわかります。
上述の赤字部分に注目してください。国は主任の給料が高額であると考えていましたが、実際に民間の私立保育園では副主任との間に40,000円以上開いていなかった。または40,000円付与したら主任との間にそれほど差がなかったのです。(主任が一族経営者の保育園は十分な差が生まれていた)
また雇われ園長と呼ばれる同様の一族経営者以外の園長先生だって主任に40,000円付与したら年収で差が一気に詰まってしまったなんていう事態も発生しました。
その為、国はこの処遇改善費加算Ⅱにおいて、一定のルールを設けて主任にも付与が可能。また職員によっては40,000円を分割し20,000円ずつ配布も可能という特別ルールを設けました。
そして、更にここでは説明していない処遇改善加算Ⅰを使えば園長先生も補助金を多くもらえることになりました。
この点については『保育士処遇改善加算』をテーマに改めて詳しく記述します。
ここでも法の穴が発生しており、その穴埋めに特別ルールが発生しているというのは、色々な意味で面白いと筆者は思っています。
(それだけ国は私立保育所の現場のことを理解していなかった。だけれど今回も予算はちゃんと支給してくれた。)
また東京都ではこのキャリアパス計画と保育園の第三者評価の両方を揃えておかないと独自の処遇改善費に関する補助金の支給額カットという制度も設けられました。
◆この記事のまとめ
・今回も”教えて保育の参考書”独自の切り口で記述を追記しましたが、やはりこの記事でも意外と現場の保育士が知らなかったことは多かったと思います。
また今回ようやく記事に出てきた「保育士処遇改善手当Ⅰ」についても改めて今後記事を掲載していきたいと思います。
※意外とこの”教えて保育の参考書”独自の切り口・・・人気みたいですね★
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